僕の最終学歴は文学部社会福祉学科卒業である。だから僕の持つ学士号は「社会学士」ではなく「文学士」である。

実際、大学に在学中は小説や詩を書いたこともあり、文章を書く、ということは苦手ではない(と思う・・・。)

ところで僕が大学を卒業した当時、社会福祉士という資格はまだなかったから、当然、国家資格ができたとき、受験資格はなく、通信過程を受講して受験資格を得た。その際、大学で履修した科目も免除科目にはならなかった。大学で学んだ科目を再履修するという、おかしな状態であった。(必要ないと今でも思っている)

通信で単位をとるにはスクーリング(2年間で15日)の受講と小論文試験を通ることが条件であった。しかし僕が受験したのは、もう40に手の届く年齢で、現場である程度の経験と知識や援助技術を得ていたから、学生時代と違って、スクーリングの講師の講義も何もわからない状態で聞いていたわけではなく、斜めから評論家的目線で聞いていた(講師にもよるが)。

講義のうまい下手、知識の新しさ、古さがよくわかった。大学教授といっても、たいした知識がなく、過去の名声や知識にとどまって進歩がない人がいるのもよくわかる。

面白いのが、小論文の「講評」で、逆に、講評に対する批評を書いてやりたくなるものもある。

小論文というのはテーマに対し、わずか1,200字にまとめるもので、指定テーマに沿ってまとめれば、ポイントを絞らざるを得ず、批評の中に「〜についてはよく書かれていますが、〜という視点もある点を忘れないように」というようなものがあると笑ってしまう。

そんなことは百も承知だ。
卒業論文のように、枚数に制限なく書くことが出来れば、すべての視点を書くことが出来る。しかしポイントを絞って掘り下げれば文章や内容に「肉落とし」という作業が必要になり、あえて触れない部分がでてくる。これらの講師は1200字の中で、まとめることができる内容という肝心の視点に欠けているのだ。馬鹿も休み休み言え、という講評は数多い。

その中で、法学のH学園大学O教授の、小論文のテーマはユニークだ。
普通、小論文のテーマとは「差別とは何か〜人間は差別から解放されることが可能か」というように簡潔なものが多い。しかしO教授のテーマは、演習問題である。

面白いので以下に全文を紹介する(2つあったテーマのうちのひとつである)

<問題>「Bは代理権もないのにAの代理人だと称して、Cとの間でA所有の不動産につき売買契約を締結した。」これは無権代理の事案である。無権代理に関する次の問いに答えなさい。
(1)無権代理が(Bによって)行われたとき、本人Aがとりうる手段は普通3つ考えられ、また、相手方Cがとりうる手段も「表見代理」の主張のほかに、ふつう3つ考えられる。本人、相手方がとりうる手段を、それぞれ3つ指摘し簡単に説明しなさい。なお「手段」には何もしないことも含まれる。また相手方がとりうる手段のうち「表見代理」の主張は(2)で論ずるのでここでは触れない。
(2)相手方による「表見代理」の主張が認められるひとつの例として「代理権授与の表示による表見代理」(民法109条)がある。民法109条が成立する為の3つの要件を述べ、それぞれの要件ごとにどのような問題があるか説明しなさい。

以上である。つまり1200字のレポートの中で(1)と(2)で指定された「無権代理が行われたとき本人、相手方がとりうる手段を、それぞれ3つ指摘し簡単に説明」と「民法109条が成立する為の3つの要件を述べ、それぞれの要件ごとにどのような問題があるか説明しなさい」 という内容をすべて書かなければならないということだ。

無権代理と表見代理の知識があれば答を書く、ということはあまり難しくない。
しかし1200字で指定された回答をすべて「それぞれの要件ごとにどのような問題があるか」を含めて書くとなると、これは結構苦労することになる。このテーマに的確に詳しく答えれば最低3000字はほしいところだ。

しかしそういうわけにもいかず、ここは「文学士」 として文章の専門知識を酷使しながら、「肉落とし」をして表現を考えた。できるだけテーマに詳細に答えるため、です・ますは使わず、区切りと歯切れのよい文体で論文を書き上げた。

まあ及第点だろう。そして結果、83点とされている。

おかしな点数だ。だって優良可の評価(通信の場合はそこまではないのだが)でいえば優は85点以上だ。なぜあえて−2点か?

講評を見る。「解説内容はその通りですが文章が雑です」

なんじゃこりゃ。法学の知識の指摘はなく、文章の批評だけがある。−2点は文章の書き方か?

法学部教授に文章の指摘を受けた文学士、という笑える話である。

しかしかの教授の講義での助詞の使い方はおかしかったぞ。一度、雑でない文章とは何たるかの講義も受けてみたいものだ。

社会福祉士通信過程の講義に係る皆さん、相手は福祉や人生のひよっこばかりではないので充分心してください。

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