先日、シルバー新報に次のようなQ&A形式の記事があった。

Q.最近、厚生労働省のパブリックコメント(意見公募)が増えているような気がしますが、何か理由があるのでしょうか?

A.改正行政手続法が4月から施行され、政省令、告示、指導指針、審査・処分の基準について義務付けられました。
パブリックコメントの目的は政策決定の透明性を高めること。もとをたどれば、規制改革・民間開放推進会議の提案で、この間の官VS民論争の副産物といえる。
これまでは、根拠となっていたのは一九九九年三月の「規制の設定又は改廃にかかわる意見提出手続」の閣議決定。実施件数は年々増える傾向にあるが、せっかく集まった意見やそれをどう反映させたかの結果を公表しなかったり、公示期間にばらつきがある、意見がほとんど寄せられないものもあるなど課題も指摘され、さらなる推進のために法定化が検討された。(以下略) 〜引用ここで終わり。

確かにパブリックコメントの募集はよく目につくようになったし、その結果も公表されている。

しかし、それが本当にこの記事が言うように「政策決定の透明性を高めること」に繋がっているのか、はなはだ疑問と思っている。

問題は国が募集したパブリックコメントについて、すべての質問や疑問に答えていないのではないか、国にとって都合の悪い質問は、握りつぶしているのではないか、という疑念である。

具体例を挙げると、この4月の介護保険制度改正に伴うパブリックコメントの募集と、その結果の公表についてでは、居宅介護支援に関しての最大の疑問であるところの「特定事業所集中減算」の問題点にまったく回答が載せられていないという事実がある。

この減算規定がなぜ、訪問介護、通所介護、福祉用具貸与の福祉系3サービスに限定的に考えられ、医療系サービスが、その対象外になっているのか、多くの方々が疑問を持ち、パブリックコメント募集の際にも、そのことを疑問としてあげている事実があるにもかかわらず、結果の公表では、このことに一言も触れられていない。

臭いものに蓋をする、という意味か。

国はこのことに対し、的確な答を持っていないのだ。まったく説明の出来ない減算規定で、単に給付費のパイの中で減加算ルールを決める際に、事業所評価加算を導入する際の取り引きとして、福祉系3サービスに限った減算規定を業界の代表団体との事前打ち合わせの取り引きに使ったのではないか?

非常に疑念が残る。

このことに関して、先月末発売されている、日総研出版の「介護リーダー 2006 Vol.11 No.2」の中で(僕の連載特集記事に)新しい介護保険制度の現場から〜その課題と提言 第2回 問われるケアマネジメントの質 と題し、小論文を書いているので参照してもらいたい。

ここでは、いかにこの福祉系3サービスに限った減算規定がおかしなものか、そしてケアマネジメントの質の評価には絶対繋がらないものである、という点、さらに、このことにきちんと答えようとしない国の不真面目な姿勢について述べさせていただいている。機会があれば是非、読んでいただきたい。

パブリックコメントが本当に「政策決定の透明性を高めること」の目的の為にあるのであれば、すべての質問や疑問に答える姿勢があってしかるべきであろう。ひとつひとつすべての疑問になど答えられないということであっても「特定集中減算」の疑問は、そう少ない数の疑問ではなかったはずだ。僕の知る中でも、多くの関係者疑問として問いかけている。

これは想像ではなく事実である。

なのに、まったくそのことが結果に反映されていない、質問としてさえ無視されているという事実は、パブリックコメントの募集と結果の公表は、単に国側のアリバイ作りに利用されているだけだという真実を表している。

パブリックコメントという形式を利用した、国の世論操作、といわれても仕方がないのではないだろうか。

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