昨日取り上げた東京都の特養における職員の利用者に対する言葉による性的虐待についてはテレビ各局のワードショーなども取り上げ、様々な形で伝えられている。

多くの論調は、特養の全体の3割近くで虐待があるという統計結果をあわせて伝え、特養の介護のあり方そのものの批判に結び付けている。

このような事件が実際に起こった以上、関係者である我々は、あらためて身を律して、自らの施設では決してそのようなことを起こさぬよう注意を払わねばならない。どんなに面白おかしく報道されようとも一切の言い訳がきくような問題ではないと思う。

傷つけられた高齢者が現実にいる、という事実はあまりに重たい。

しかし全国の特養の3割で虐待があるという、その統計の詳細は何をもって「虐待」というのだろう。

本当に3割の施設が虐待を行っているとしたら、これは非常に問題である。例えば、職員がアンケートに答えるに際し、自分の良心に照らして、かなりレベルの高い部分で、何気なくかけた言葉が心を傷つけたのではないかという反省の思いがこの数字に含まれているのではないかと秘かに考えているが、どちらにしても、人を不幸にしたり、心を傷つけるようなケアサービスはなくしていかねばならない。社会の批判をきちんと受け止め、より良い施設サービスを作っていく必要がある。

ところで私の地域では、今朝、もうひとつ大きな事件が報道されている。

それはグループホームの施設長が利用者の家族から預かったお金(約100万)を着服し使い込んで逮捕されたというニュースである。

もともとこの元施設長は施設職員宅などに窃盗で侵入し、既に逮捕されていたものであるが、逮捕後、法人の内部調査で預かり金の着服が発覚したものである。

実はそのホームは僕が外部調査に入ったこともあり、元施設長とも話をしているので、ちょっと信じられない思いもある。しかし同法人の職員宅の窃盗行為などを考えると、人物として問題があったのかもしれない。

それにしても100万という預かり金を、施設長個人が着服して長い期間発覚しないという施設の管理システム自体に大きな問題はないのだろうか。

僕の施設に置き換えて考えてみると、僕が利用者の預かり金を勝手に預金から下ろしたり、預かっているお金を使う、ということは1円であっても不可能だ。必ずその過程では預かり金出納事務職員や、預かり金責任者(相談員)など複数の職員の手や目が介在する。

仮に何かの間違いで、僕が不正にお金を引き出して使ったとしても、毎月の金銭出納元帳の作成時点で使途不明金が発覚する。長期間にわたって不正が隠されることはないと思う。

しかしグループホームの外部調査などに関わっていつも感じていた点であるが、グループホームの預かり金の出納システムはかなり時代遅れで、必ずしも金銭管理規定が整備されている必要はなく、入所契約時に利用者とホーム側で適切な金銭の取り扱いのルールが話しあわれておれば良く、預かり金の出納帳なども、帳票として適切とはいえないような「小遣い帳」程度の扱われ方しかされていないホームも多い。

外部調査は不正を調査する目的ではないので、個人的な金銭の着服など最初から「ない」という性善説で預かり金の取り扱いをみる。

「出納帳」に替わる小遣い帳があって、定期的に家族に「報告しています」とされれば問題は特になく、「できれば金銭管理規定があったほうが安全ですね」と提案するのが関の山である。

しかし預かり金規定の整備や毎月の預かり金出納処理(元帳による月ごとの出納状況のチェックや預金残高一覧表のチェック)は特養で「していない」というなら指導対象である。

いくら小規模施設とはいっても、他人の金銭を預かるということに変わりはなく、しかも対象者は金銭管理能力に問題がある場合が多い認知症高齢者、ということであれば、運営基準上ももう少し厳格な金銭出納処理を求めるべきではないかと、かねがね考えていた。

ホーム内のシステムとして不正を働ける要素を最小限とすることがまず基本である。

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