特養に外部の医療機関から訪問診療や訪問看護が行えないのは常識と思われている。

介護保険の居宅サービスは施設入所者には使えないし、制度改正で位置づけられたショートの在宅中重度者受入加算における訪問看護ステーションからの訪問看護師による健康管理も「訪問看護費」が算定されるわけではなく、施設が訪問看護ステーションとの契約を行い「在宅中重度者受入加算」として施設に支払われる介護報酬の中から訪問看護ステーションに費用を支払うものだ。

また医療保険のルールでは在宅時医学総合管理指導料や在宅患者訪問看護・指導料、訪問看護指示料、在宅患者訪問薬剤管理指導料は原則診療報酬の対象外となっている。

しかし実際には例外的に特養入所者に対して訪問診療や訪問看護ができる場合があることは皆さんもご存知であろう。

いや、気づいていない方もいるかもしれないと思え、今日はこの話題を取り上げる。

それは「特別養護老人ホーム等における療養の給付(医療)の取扱いについて(平成18年3月31日・保医発第0 3 3 1 0 0 2 号)」で、在宅時医学総合管理指導料や在宅患者訪問看護・指導料、訪問看護指示料、在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定できない条件から「特別養護老人ホームの入所者であって、末期の悪性腫瘍であるものに対し、在宅療養支援診療所の〜する場合を除く」とされている。

つまり4月の診療報酬改定以後は、特別養護老人ホームの利用者であっても、末期の悪性腫瘍の方に対し『在宅療養支援診療所』からの訪問診療や、その指示を受けた訪問看護は医療保険の算定ができるわけである。

末期がんは介護保険制度改正で4月から2号被保険者も特定疾病の対象となっており、当然、特養入所者はすべての方が介護保険対象者ではあるが、訪問看護のルールでは「厚生労働大臣の定める疾病」に末期がんも含まれており、医療保険の対象で、適用関係にも問題ない。

ただしあくまでこれは在宅療養支援診療所の医師によるものや、その指示を受けた訪問看護に限定されている。

そうなると実際に地域に在宅療養支援診療所がない場合は、特養利用者で末期の悪性腫瘍の方への訪問診療と訪問看護はできないということになるが、しかし診療報酬改定で厳しい経営が迫られる医療機関が多い中、在宅療養支援診療所の基準は厳しいが、診療報酬は厚くシフトされており、今後その指定を受ける医療機関は増えるのではないかと予想されている。

そうなれば、特養における末期の悪性腫瘍の方の「看取り介護」は所属医師の医療機関のみならず、在宅療養支援診療所の協力を得ながら行うことができることも意味している。

こと末期の悪性腫瘍の方の「看取り」については多様な施設と他の医療機関や訪問看護ステーションの連携支援が行われる可能性があり、それは、あらたな施設におけるターミナルケアのモデルを作り出す要素になるかもしれない。

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