数年前からであるが1年に1度、出身の北星学園大学で、社会福祉学部の3学科、2.3年生を対象にした講義を受け持っている。2学年3学科だから、毎年約230人程度が対象である。
内容は、社会福祉実習の為の現場の理解ということで、僕は特養という場所がどのような場であるのか、そこでの実習に際して、どのような事前準備や知識を持ち、どのような態度で臨むべきかなどを講義している。
ともかく福祉を専門に学んでいる学生とはいっても、現場の知識はまだまだ不十分だし、福祉の基礎知識も完全ではないので、わかりやすい言葉を選んで話すことが重要であり、かつ、教科書からは学べない現場の生の声を実態に即して伝えないと意味が無い。
僕は毎年、特養って何、どんなところ、という部分について、どのような方々が何の為に生活しているのか、つまり障害を持っていることは不便なことではあるが、決して不幸ではない、という「五体不満足」の中で乙武洋匡さんが述べている考えに似た部分と、あくまで治療や機能訓練の為に居る場所ではなく、生活をする様々な場所のひとつに過ぎず、そこで展開されるケアサービスは、まさに生活支援で、その人らしい、あたりまえの生活作りに対してのアプローチが重要である点を強調している。
当然、福祉の大学の学生は、介護職というより、相談援助職としての実習になるわけだから、特養の相談員の位置づけ、業務内容についてもしっかり理解していただく。
それは単に相談員業務は何かということにとどまらず、チームの中で他職種との関係とともに、ソーシャルワーカーとして、どのように関わるのかという部分に触れて話をする。
もちろん相談員の業務内容自体は、ケアマネジャーとの兼務状況や環境によって、各施設によっても異なるが、基本的にどのような役割を求められているのかをお話しする。
もちろん制度の変革の状況に応じた話題も必要になるから、今年の講義では、居住費と食費の自己負担化による影響、そのことによる今後の利用者の意識変化の予測、特養の将来像への影響も語らねばならない。
しかし一番大事な点は、社会福祉援助者として、社会や人に対して持つべき視点とは何か、ということが見えてこないと現場からわざわざ出向く意味はない。
ということで6/26月曜日は、その講義の為、朝から札幌で、帰りは夕方になり、業務も多忙であるところからブログはお休みする予定である。
なお、参考に今年の講義内容のレジメをここで紹介しておく。
（参考レジメ）
特別養護老人ホームにおける現場実習の視点
１.施設自習における2つの何？
(1)特別養護老人ホームとは何か。
��.利用者の属性、業務の展開過程、etc.
��.措置制度から介護保険制度へ、そして介護保険制度改正（17年10月改正、18年4月改正）
（２）相談員とは何か
��.相談員何でもや論の2つの視点
��.介護職員、看護職員との関係〜介護実習必要論と不必要論
��.介護保険後の相談員〜介護支援専門員の登場
２.施設実習に望んで
（１）何を勉強したらよいのか〜何も求められているのか。
（２）どのように実習を行うのか〜自分は何を求めているか
※特養は実習の場なのか。
※「施設の介護現場で実習さえすれば多くの学びが得られる」の嘘
＜予備実習＞＜調査実習＞に終わる危険性。
３.特養をめぐる状況と今後の課題
（１）特養解体論の背景
昭和50年代前半〜収容施設から生活施設への考え方、ケアの展開
オムツの随時交換などADLへの援助→QOLへの転換
昭和58年代〜収容から入所へ
認知症高齢者のケアの具体的方法〜より専門的ケアの提供へ
平成10年ごろ〜ユニットケアの導入
設備基準の考え方にユニット設備の導入〜個別ケアの具体的方法
平成13年〜15年ころ
新型特養の制度への位置づけ〜ホテルコストの利用者負担導入
既存特養→集団処遇の批判と解体論→脱集団処遇→既存施設でのユニットケアの展開
平成15年6月26日
「2015年の高齢者介護」〜高齢者介護研究会
介護のスタンダードが身体介護モデルから認知症モデルへの転換を明記
平成17年10月
介護保険制度改正（18年4月）に先駆けて施設利用者の居住費と食費が全額利用者自己負担とされた。
2.ユニットケアの展開〜形態ではなく、個別ケアの方法としての視点
3.小規模多機能サービスの考え方
認知症ケアの転換
問題対処型ケア（徘徊、弄便、帰宅願望、異食等を問題とし行動を抑制したり対処的にケアを展開） → ケアのプログラム化（〜療法、〜レク等、グループワーク中心のプログラム優先ケアが中心 →訓練化、個別性や主体性軽視の傾向） →
生活支援型 （できること、やってきたことなど生活行為の復活、暮らしを基本とした環境、馴染みの環境、馴染みの関係を重視したケア）
４.最後に施設実習に積極的な施設と、そうでないところがあろうかと思います。その中で私自身はケアサービスの向上の為には、人の資質向上の教育が最も重要だと考えます。ですから学生の現場実習は、大変重要と考えています。ただし学生は現場で体験するだけ、あるいは実習を経験するだけで何かを得られると考えているとしたら、それは間違いです。
わずかの期間で、成果を挙げるためには事前の準備、ある程度の知識を持って、それに基づく自分なりのテーマに基づいて実習を行わないと、結果的に「わかりかけてきた」時点で実習期間が終わってしまうというケースも多くみられます。
学生は「宝」ですが、本当に光り輝く為に磨かれなければなりません。その意味では厳しい指導、たゆまない努力が絶対条件かと思いますし、事前準備は何より実習を実のあるものにします。そのことをよく理解しないと実習は「ただ行っただけ」で終わってしまいます。
介護・福祉情報掲示板（表板）
内容は、社会福祉実習の為の現場の理解ということで、僕は特養という場所がどのような場であるのか、そこでの実習に際して、どのような事前準備や知識を持ち、どのような態度で臨むべきかなどを講義している。
ともかく福祉を専門に学んでいる学生とはいっても、現場の知識はまだまだ不十分だし、福祉の基礎知識も完全ではないので、わかりやすい言葉を選んで話すことが重要であり、かつ、教科書からは学べない現場の生の声を実態に即して伝えないと意味が無い。
僕は毎年、特養って何、どんなところ、という部分について、どのような方々が何の為に生活しているのか、つまり障害を持っていることは不便なことではあるが、決して不幸ではない、という「五体不満足」の中で乙武洋匡さんが述べている考えに似た部分と、あくまで治療や機能訓練の為に居る場所ではなく、生活をする様々な場所のひとつに過ぎず、そこで展開されるケアサービスは、まさに生活支援で、その人らしい、あたりまえの生活作りに対してのアプローチが重要である点を強調している。
当然、福祉の大学の学生は、介護職というより、相談援助職としての実習になるわけだから、特養の相談員の位置づけ、業務内容についてもしっかり理解していただく。
それは単に相談員業務は何かということにとどまらず、チームの中で他職種との関係とともに、ソーシャルワーカーとして、どのように関わるのかという部分に触れて話をする。
もちろん相談員の業務内容自体は、ケアマネジャーとの兼務状況や環境によって、各施設によっても異なるが、基本的にどのような役割を求められているのかをお話しする。
もちろん制度の変革の状況に応じた話題も必要になるから、今年の講義では、居住費と食費の自己負担化による影響、そのことによる今後の利用者の意識変化の予測、特養の将来像への影響も語らねばならない。
しかし一番大事な点は、社会福祉援助者として、社会や人に対して持つべき視点とは何か、ということが見えてこないと現場からわざわざ出向く意味はない。
ということで6/26月曜日は、その講義の為、朝から札幌で、帰りは夕方になり、業務も多忙であるところからブログはお休みする予定である。
なお、参考に今年の講義内容のレジメをここで紹介しておく。
（参考レジメ）
特別養護老人ホームにおける現場実習の視点
１.施設自習における2つの何？
(1)特別養護老人ホームとは何か。
��.利用者の属性、業務の展開過程、etc.
��.措置制度から介護保険制度へ、そして介護保険制度改正（17年10月改正、18年4月改正）
（２）相談員とは何か
��.相談員何でもや論の2つの視点
��.介護職員、看護職員との関係〜介護実習必要論と不必要論
��.介護保険後の相談員〜介護支援専門員の登場
２.施設実習に望んで
（１）何を勉強したらよいのか〜何も求められているのか。
（２）どのように実習を行うのか〜自分は何を求めているか
※特養は実習の場なのか。
※「施設の介護現場で実習さえすれば多くの学びが得られる」の嘘
＜予備実習＞＜調査実習＞に終わる危険性。
３.特養をめぐる状況と今後の課題
（１）特養解体論の背景
昭和50年代前半〜収容施設から生活施設への考え方、ケアの展開
オムツの随時交換などADLへの援助→QOLへの転換
昭和58年代〜収容から入所へ
認知症高齢者のケアの具体的方法〜より専門的ケアの提供へ
平成10年ごろ〜ユニットケアの導入
設備基準の考え方にユニット設備の導入〜個別ケアの具体的方法
平成13年〜15年ころ
新型特養の制度への位置づけ〜ホテルコストの利用者負担導入
既存特養→集団処遇の批判と解体論→脱集団処遇→既存施設でのユニットケアの展開
平成15年6月26日
「2015年の高齢者介護」〜高齢者介護研究会
介護のスタンダードが身体介護モデルから認知症モデルへの転換を明記
平成17年10月
介護保険制度改正（18年4月）に先駆けて施設利用者の居住費と食費が全額利用者自己負担とされた。
2.ユニットケアの展開〜形態ではなく、個別ケアの方法としての視点
3.小規模多機能サービスの考え方
認知症ケアの転換
問題対処型ケア（徘徊、弄便、帰宅願望、異食等を問題とし行動を抑制したり対処的にケアを展開） → ケアのプログラム化（〜療法、〜レク等、グループワーク中心のプログラム優先ケアが中心 →訓練化、個別性や主体性軽視の傾向） →
生活支援型 （できること、やってきたことなど生活行為の復活、暮らしを基本とした環境、馴染みの環境、馴染みの関係を重視したケア）
４.最後に施設実習に積極的な施設と、そうでないところがあろうかと思います。その中で私自身はケアサービスの向上の為には、人の資質向上の教育が最も重要だと考えます。ですから学生の現場実習は、大変重要と考えています。ただし学生は現場で体験するだけ、あるいは実習を経験するだけで何かを得られると考えているとしたら、それは間違いです。
わずかの期間で、成果を挙げるためには事前の準備、ある程度の知識を持って、それに基づく自分なりのテーマに基づいて実習を行わないと、結果的に「わかりかけてきた」時点で実習期間が終わってしまうというケースも多くみられます。
学生は「宝」ですが、本当に光り輝く為に磨かれなければなりません。その意味では厳しい指導、たゆまない努力が絶対条件かと思いますし、事前準備は何より実習を実のあるものにします。そのことをよく理解しないと実習は「ただ行っただけ」で終わってしまいます。
介護・福祉情報掲示板（表板）
感動の完結編。
後学の為に教えてください。
乙武洋匡さんなら、知っていますが…。