今回の制度改正では、特養でも老健でも、施設利用者が在宅復帰する取組への加算がいくつか設けられている。

例えば老健の「試行的退所サービス」もそのひとつである。このことはまたいずれの機会かで論ずるとして、今日は特養と老健で共通して加算項目として設けられた在宅復帰支援機能加算について考えてみたい。
（とは言っても両者のそれは、特養が在宅復帰率2割超で算定可能だが、老健は5割超が算定基準でハードルは著しく高くなっているが）

さて、この加算は在宅復帰率の結果に対する加算となっている。

まず条件として、在宅復帰する為の支援内容としては

1.本人や家族に対してもサービス利用に関する必要な情報提供や食事、入浴、健康管理、家屋改善などに関する相談助言を行っていること。

2.入所者が在宅復帰する際に、居宅介護支援事業所に対し入所者に係る居宅サービスに必要な情報の提供や退所後のサービス利用に関する調整を行っていること。

3.入所者の退所した日から起算して30日以内に居宅を訪問するか、又は居宅介護支援事業所からの情報提供を受けることにより、当該退所者の在宅における生活が1月以上継続する見込みであることを確認し記録すること。

これを行っていることを前提に、（特養の場合は、）算定日が属する月の前の6か月において当該施設から退所した者の総数（在宅・入所相互利用加算の対象者を除く）のうち、当該期間内に退所し、在宅において介護を受けることとなったもの（入所期間が1月間を超えたものに限る）の数が占める割合が2割を超えていることとされている。

（老健の場合は、退所した者の総数のうち在宅において介護を受けることとなったものの割合が5割を超えなければならない）

１.２.３の条件については退所時等相談援助加算の条件とリンクしているものもあり、また加算に関係なくとも施設の責任として在宅復帰する場合は当然行われるべき指導内容であり、この加算のためにわざわざ行うという手間は感じないと思われ、このことが特に問題とはならないだろう。

問題は在宅復帰率の確認である。

例えば

9月（退所者なし）　10月（長期入院退所２名）　11月（死亡退所3名）　12月（死亡退所２名）　1月（死亡退所１名）　2月（長期入院退所3名、死亡退所１名）　3月（死亡退所1名、在宅復帰2名）　4月（死亡退所2名）　5月（長期入院退所1名）　6月（退所者なし）　7月（退所者なし）　8月（死亡退所１名）　9月（死亡退所者2名）

の場合を考えてほしい。

この在宅復帰率の算定条件は
「算定日が属する月の前の6か月において当該施設から退所した在宅復帰者の割合」であり「在宅復帰者があった月の前の6か月」ではない。

すると例の場合、3月に在宅復帰者が2名あるが、この月に当該加算を算定しようとすると、その前の月6月間（９月〜2月）は在宅復帰者が0名だから在宅復帰率は0割で算定不可。

10月〜3月までは、在宅復帰者2名÷退所者総数13=0.15・・・、であり2割を超えず算定不可、同様に11月〜4月（2÷15=0.13算定不可）12月〜5月（2÷13=0.15算定不可）1月〜6月（2÷11=0.18算定不可）2月〜7月（2÷10=0.2、ちょうど2割で2割を超える条件に合致せず算定不可）３月〜８月（2÷7=0.285・・算定できる）ということになる。

つまり3月に2名在宅復帰した特養で、当該ケースのような退所者推移においては、9月分の請求のみ「算定日が属する月の前の6か月において当該施設から退所した在宅復帰者の割合が2割を超えている」として全員の請求単位に10単位を加算請求できる、ということになる。

そして10月請求からは再び加算算定不可、という状態になる。

計算自体は単純な足し算、割り算であるが、ルールの理解としては複雑だ。請求漏れ、という施設も出てくるのではないだろうか。

しかも加算算定する、ということは利用者の自己負担も増えるわけで、ある一定期間のみ、急に10単位加算される。

しかしそれは現在の利用者には直接関係のない在宅復帰した方へ対する支援の実績としてである、ということに対し理解が得られるであろうか。

予防通所サービスの成功報酬の説明と同じくらい、この説明も難しい。とりあえずは在宅復帰者がいる施設は、毎月の計算は欠かせないということになる。

実はわが施設では2月に2人（ご夫婦）の在宅復帰支援を行っているのでまさに当事者であるのだ。

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