いつか書いたことがあるが、作家の故 司馬 遼太郎さんが、自分の新聞記者時代と作家になってからの文章の書き方の違いにふれた中で「新聞とはその国家の英知と見識を代表するものでなければならないが、日本の場合、これがしばしば流行を代表するものとなる」という一文を書かれていた。

そして、氏は記者が書く報道記事は、記事が面白いことよりも、伝える情報が正しいことが大事で、逆に作家は事実であっても面白くない小説を書けば飯が食えない、と記者と作家の書く文章の違いを述べられていた。

氏が言う英知と見識は、その社説にもっとも現れるもので、当然、それには意見の違いや分析の視点の違いがあってよい。しかしその絶対条件は、正しい情報をもとに客観的な立場で判断することでなくてはならない。

しかし昨日から指摘している北海道新聞の室蘭いぶり版の「変わる介護保険 西胆振からの報告」では、明らかに事実と違った情報を読者に提示している。いったい何万人がこの記事を読んで誤解してしまうのだろう。

1.要支援となれば、起き上がりが出来なくともギャッジベッドがレンタルできない。
2.要介護1のままなら無条件でギャッジベッドレンタルができる。
3.要介護1が要支援2に判定される大きな原因は認定調査と審査にかける労力と時間が少なすぎることが最大原因だ。

主にこの3点の事実誤認が「実態」として読者に伝えられているのだ。非常に問題だ。

今日もこの特集は続いている。

今日の内容は、予防プランや地域支援事業を包括支援センターが担当するが、その数も少なく、職員も1事業所3名という配置で、予防対応以外にも虐待などの対応もするには人数も足りない、しかも予防プランの委託もケアマネひとり8件だから、残りの予防プランはすべて包括が対応せねばならずそのすべてをこなせる量なのか、という内容である。

すでに全国各地でこの問題は「ケアプラン難民を生む」として大きく取り上げられており「西胆振からの報告」というタイトルのわりに、当たり前のことをいまさらに特集記事としている間の抜けた内容に思えてならないが、当たり障りのない問題だから、あまり間違った事実を載せる心配もないということだろうか。

しかし今日の記事もよく読むと、おかしな記述がある。普段なら、この程度の認識不足は見逃して問題ないのだが、昨日が昨日だから、つい絡みたくなる。

今日の記事では「居宅介護支援事業所のケアマネは10月から一人が受け持てる要支援者を8人までに制限される」と記載されている。

これだけを読めば、知らない読者は、では9月までは皆、9人以上担当しても良いんだ、という理解となる。

しかし9月まで8人を超えて予防プランを持てる事業所は、3月31日時点で営業していた既存事業所のみであり、4月1日以降の新規事業所は、この経過措置の適用を受けず、開始当初から8人枠の制限があるのだ。

こんな細かなことまで普段なら指摘しないが、昨日の記事に対する憤りが、この特集を読むときにあら捜し的視点を生んでしまっている。

もともと信頼性がない記事だと思い込んでいるからだ。

少なくとも、昨日今日とこの連載を読む限り、この執筆者は記事として発信する情報の正確性にはあまり興味がなく、むしろ制度改正というこの時期のタイムリーさのみに視点を置いているのかと疑いたくなる。

介護認定の問題などは、調査員や審査委員がどう頑張っても変えようがない、国という大きな力が決めたルールの中で決められているのであり、昨日の記事の間違いはすでに指摘しているが、しかしあの記事を読んだ多くの読者は、調査員の調査も不正確で、認定審査は短い時間で流れ作業で適当に行われて、正確な介護度が出ない、と思い込んでいる。

この一端刷り込まれた偏見をどのように変える事ができるのだろう。

問題は先先へとつながる大きなものだ。

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