改正された介護保険制度がスタートして、10日が経過した。

当地では新予防給付のスタートが6月からである為、実際の運用面での問題はまだ出てきていないが、他地域では、早くも様々な問題点が表出している。

特に今一番問題になっているのは、定額報酬であるが故の様々な問題である。

例えば、介護予防訪問介護では、週1回〜週3回以上まで、報酬単価は分かれているが、定額月額の報酬である。つまり1回の訪問時間でどんなサービスを、何時間行おうとも報酬算定額に変わりはないのである。

この際に月1〜2回の通院介助(身体介助)を定額報酬という枠の中で計画に位置づけることが可能か、実際にそれを行ってくれる事業所があるか、という点が大きな問題となっている。

もともと国は介護予防の訪問介護で身体介護の通院介助を想定していなかったのではないだろうか。

だから、これに関するQ&Aも出されていないし、各地域の包括支援センターも頭を悩ます問題となっているようだ。身体介護の通院支援の必要性の把握が今まで以上に重要になってくるだろうし、予防介護の観点からのサービス計画とのマッチング、全体のサービス計画との整合性が求められてくる。少なくとも身体介護の通院支援が予防給付対象者に保険内で出来ないということはないはずだ。

また定額報酬の問題は、それ以外にも様々な問題を含んでいる。

事業者は少ない時間でいかに効率的にサービスを提供するかという観点になりがちだろうし、利用者は同じ金額なら出来るだけ「やれるものはやってもらう」という考えになるだろう。

この点を介護予防の観点から訪問介護事業所がインセンティブを持って、サービス内容や提供時間を決めて、利用者の同意を得なさいというわけである。

繰り返して言うが、この部分のインセンティブはサービス事業所にあるわけで、予防プランを立てる包括支援センターの保健師等にあるわけではない。

もちろん保健師等のプラン作成者は、その目標の達成や、モニタリングで効果を測定する際に、その内容を問うことになろうが、この機能が有効に働かないと、事業者の都合の良いプランになってしまう恐れがある。インセンティブが事業所にあるからといって、適正な予防プランの目標が達せられる内容のサービスになっているかという確認や指導は不可欠だ。

だから予防プランを立てる包括支援センターは、その指導や効果の測定がいかに正当なものであるかという力量が問われてくるわけで、公平・中立の立場にあることが大原則になる。

よって、包括支援センターから予防プランを委託する際には、原則、包括支援センターと同一法人の居宅介護支援事業所への委託は出来ないことになっており、やむをえない場合も、運営協議会の承認を受けなければならない。

ところが、当登別市の、予防プランには「経過措置」という非常に甘いルールが適用され、現在担当している利用者が予防給付に移行した際は、自法人の包括からも委託を受けて引き続き、予防プラン作成が可能としている。

隣市が、一切このような扱いを認めていないこととは対照的な措置である。

どちらが良いかは短絡的には結論は出せないかもしれない。

しかし、定額報酬に関わる様々な問題を考えたとき、ある利用者の予防プランを立案すべき包括支援センターが、自法人の居宅介護支援事業所に予防プランを委託し、かつ自法人内のサービスプランのみで予防介護計画を完結さえてしまえば、利用者の不利益となるサービスプランが実質的にチェックできないという危険性は大きくなることだけは間違いないといえる。

きちんとチェックしていると言われても、客観性には著しく欠ける主張とならざるを得ない。

本当に、大丈夫なのだろうか。公平中立という視点の重要性を軽視してはいないだろうか。

少なくとも、公平中立性の担保は何もない、というのが経過措置への市民の目だろう。

もう少しハードルを高くした公平中立性の確保への対応が必要ではなかったかと疑問を持って、6月の予防給付スタートをみつめている。

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