介護保険制度のサービス提供方法は、事前のケアマネジメントによる計画に基づいて、利用者個々人にもっとも適したサービスを提供する、というところに特徴があり、ケアマネジメントはこの制度の根幹部分をなすものである。

そしてそのケアマネジメントの専門家として、介護支援専門員(ケアマネジャー)が位置づけられており、計画の立案から、各種サービスに関わる職員の連携・連絡、給付管理まで、介護サービス提供のすべての部分に中心的に関わることとなる。

であるから、利用者個々に提供されるサービスの質に直接結びついているのが、ケアマネの力量であると言えるのだ。

ところで、今回の制度改正論議において、このケアマネ及びケアマネジメントの質がどのように担保されるのか、という議論が盛んであり、その結果が、様々な加算、減算項目として基本報酬以外のところで評価されているところである。

このうち、制度施行当初から問題になっていた、いわゆる「囲い込み」。

つまり特定施設や団体等が、所属のケアマネを持つことにより、利用者に提供される介護サービスについて、サービスの特徴や質に関係なく自法人なり、自団体の介護サービスを使うことを優先的に計画し、ある特定のグループのサービスのみが利用者に提供されると言う問題であるが、これについての議論があったところである。

そして、議論の途中には、独立・中立的な居宅介護支援事業所を評価する方法が議論されたわけであるが、その結果であるところの特定事業所加算については、実質、独立中立性を評価する結果にはならず、大規模事業書だけがこれに該当し、ますます特定の事業規模を持つ団体の力が強まり、基盤のない独立型ケアマネ事業所がますます苦しむのではないか、という点は、先日の「各団体の制度改正への評価」で指摘しているところである。

ところで、囲い込みに対する減算として「特定事業所集中減算」というルールが新たに位置づけられたが、これも非常におかしなルールになっている。

なぜかというと、このルールは特定のサービス事業について、事業者ごとに介護支援専門員の計画したサービスが計画総数の9割以上である場合、全ての計画に関わる費用が減算されるルールである。

ところで問題は、この「特定のサービス事業」である。

なんとこれは訪問介護と通所介護、そして福祉用具貸与の福祉系サービス3事業しか該当しないのだ。

つまり同じ通所サービスでも、医療系の通所リハビリは、ある居宅介護支援事業所が全てひとつのサービス事業所のプランしか立てなくとも減算対象にはならないということである。

何故このような差があるのか。

おそらくこれは医療系サービスについては、ケアマネの判断という部分より、医師の指示、が優先される部分が大きいため、居宅介護支援事業所の減算には馴染まない、というのが大きな理由だろう。

しかしもともと「囲い込み」の問題は、特定の医療機関が患者を中心に利用者を囲い込むことが多いことから問題視されるようになった、という経緯があるはずで、福祉系3サービスのみにこのルールを適用しても、あまり意味がないし、本末転倒という状況が生まれる危険性を大いに含んだものだ。

しかも、そもそも介護サービスというものは、どこの誰が行なっても標準的なケアサービスが提供されるという状況にはなく、個々の事業所において質やサービスに差があるのであり、利用者にとっては、その方に合う、合わない、という状況が個々の事業所ごとに生じ、それはサービス利用の満足度および希望として現れるのだ。

このことは国としては、9割を超える正当な理由として「サービスの質が高いことによる利用者の希望を勘案する場合」として認めている、というのだろうが、その判断基準は都道府県任せで明確なものは何もない。

希望によるところが質の高さである、という判断をどうするのか。

ケアマネが質が高いと判断していても、都道府県がそれを「違う」といえる判断基準がどこにあるのか。

極めて矛盾と、問題を含んだ減算ルールであると言わざるを得ない。

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