面接の技法といえば、時期柄、入試の面接や、就職面接のテクニックと誤解される向きもあろうが、そうではない。

相談援助場面における、面接の技法について、今日は少し触れてみたい。

ホームヘルパーの養成講座でも、ヘルパーの相談援助に関連して、面接場面の技法に触れざるを得ない部分がある。しかし、その時間はわずか2時間程度である。

もちろんそれ以前に、バイスティックの7原則や、自己覚知について話をする時間を取っているのだが、いかんせん限られた時間の中であり、基本原則しか講義できない。

我々ソーシャルワーカーは、その原理原則を大学時代の4年間で様々な角度から、知識を得て、鍛えて活用するまでに訓練するのだが、ヘルパー講座など短い時間でこのことを説明する際に気をつけなければ、面接を説得術、と間違えて理解させてしまう恐れが多分にある。

まずヘルパーのテキスト内容を見ると、面接技法に関連し、カウンセリング技術が取り上げられ、1.傾聴の技法、2.励ましの技法、3.言い換えの技法、4.要約の技法、5.質問の技法、6.明確化の技法、7.積極技法、などが挙げられている。

これが問題だ。

ソーシャルケースワークの原理原則をきちんと理解しないで、面接場面の技術に捉われてしまうと、利用者の声を聞く、声なき声も聞く、という面接の本来的意味を忘れて、聞くより先に、しゃべりたがる援助者を生んでしまう。

ヘルパーの面接場面に限らず、我々の面接場面というのは面接室で行なう場合に限らず、別な援助を行ないながら、とか、何気ない生活場面の中で急にそういう場面に切り替わる、という状況が極めて多い。

利用者から「話を聞いてほしい」と求められて会話する中で、結果的に面接場面となる場合も多い。

その時、我々に求められていることは、答えを示す、ことではなく、とりあえず訴えに耳を傾ける、ことなのであり、話す、ことより、聞くことなのである。

だから前述したテキストの内容にしても、僕はまず、いかに聞くことが大事であるかを述べた上で、技法としての「傾聴」ではなく、真摯に援助に当たる立場として、あるいは人と向かい合うときの基本姿勢としての「傾聴」が大事であることを強調する。

極端に言えば「傾聴」のない技法は邪魔者以外のなにものでもない。

傾聴できる態度が身についた時、あらためて技法の理解に努めても遅くないのだ。

援助者と被援助者という関係に限らず、我々の日常生活の中でも、3つを聞いて10を理解する、という頭の良い方がいる。人に質問して、答えを完全に示していないのに結論を理解してしまうタイプだ。

あっていることもあるし、まちがっていることもある。

しかし、このタイプが、援助者であってはたまらない。相談者は、あなたの価値観を聞いているんではなく、私の訴えを聞いて欲しいのだ。

友達から恋愛の相談を受けて、何も答えられないで、相槌さえもうてなかったけど、「聞いてくれてありがとう」と感謝されたり、またその逆の経験をお持ちの方は多いのではないだろうか。

面接を単に職業的、専門的な技術として捉えてもらっては困るのだ。

いかなる人にも人生は面接の連続であり、そこで人生の方向が決まる。そこには真摯に人と向き合う姿勢が大切で、必然的に受容と理解の態度が必要になってくるが、その前提は「人の話を聞く」事であることを忘れてはならない。

相談場面で相談者より、あなたの方がしゃべってはいないか、気をつけたほうが良い。

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