来年4月に改訂される介護報酬単価については1月26日に諮問を出す予定で進められているが、一昨日この改訂の大枠が政府与党と厚生労働省の協議で決定された。

それによると介護報酬は全体0.5%%減、在宅1%減、施設は10月改正で減額された分を考慮して±0%とされている。

これをみて施設の報酬単価が守られた、と理解する向きがあるが、果たしてそうだろうか。

その前に忘れてはならないのは、この背景にはユニット型個室の単価を上げて、その分、従来型多床室の単価を下るという意図が隠されている点(一部では既成事実として国の関係者が明言している)であり、老施協もこれに対し積極的に反論していない点が解せない。

さて、そこで考えてほしいことは、この増減率の比較は、総額比較ではない、という点だ。

つまり仮に事業所の数や、利用者数が現行と同じと想定して、給付費の総額の増減が−5%とか±0%とか示されているわけではないのだ。

あるサービスの単価が比較されているに過ぎない。

どういう意味かというと、単純に施設サービスを例に挙げれば、総体の額は全く考慮に入れず、施設サービスのうち、ユニット型個室の単価を5%上げて、従来型多床室の単価を5%下げれば、施設サービス費は全体で ±0% ということになる。

しかし、これは考えようによってはおかしい。

総体が±0%になるには、例示の場合、ユニット型個室と従来型多床室の比率が1:1でなければならないのだ。

だが実際にはそうではない。従来型多床室の方がユニット型個室より圧倒的に数として多いはずだ。

つまり今回改訂の増減率が施設サービス費±0%とはいっても、単価が下がる従来型多床室が多くて、単価が上がるユニット型個室の数が少ないということは、給付費のパイは下がるという単純な結果が導き出されるのである。

これが今回の改訂の本質だ。

居宅サービスの数字も同じだ、軽介護者が−5%で、重介護者が+4%だから総体−1%というのはおかしい。この場合も軽介護者と重介護者の比率が1:1でないと相対的に−1%にはならない。それとも各サービス別のメリハリで総体−1%と言っているのか、そうであっても同じ数字のマジックが現れてくるだろう。(通所サービスが3%減で、訪問看護が2%増だから総体−1%と言う意味には本来ならないということと同じである)

物事には本音と建前があるが、今、新聞等で報道されていることは事実である。しかしその中には本音を隠した、様々な建前で飾られた数字が先行している点を見誤ってはならない。

ユニット型個室の単価を守るために、総体の給付費が著しく下げられ、数多い従来型施設の経営がますます困難になるような改悪に対し、我々の上部組織は何故、積極的に反論しないのだろう。多床室単価に対する「逆転現象」や「ねじれ論」に根拠がないことは

「居室類型による報酬差は妥当か」

でも示してきた。おかしなことを、おかしいといわないのか、思っていないのか。それとも上部組織は「新型特養」だけを守れば良いと思っているのか、非常に疑問である。

加えて、今回の改訂では、要介護度については重度者に厚く報酬が設定され、要介護1.2はさらに単価が下がるといわれる。実質、特養等の介護保険施設の対象者を要介護3以上にしようとする誘導がみえている。本当にこれでよいのだろうか。

居宅サービスも同様である、在宅1%減とは言っても、要介護1.2は5%減である、4.5は4%上げである。

末期がんが介護保険の対象となったことで、訪問看護など重度者に対応する分は報酬引き上げが図られているが、要介護1.2の5%減は通所サービスに大打撃を与えるだろう。

予防給付に移行する利用者が多い、これは現行の介護給付の報酬より大幅減額だ。加えて、軽介護者の介護給付費も5%減ではやっていけない。しかし通所サービスの介護予防効果も立証されているところであり、軽介護者の利用サービスとしてはエビデンスができつつある中、こういう制度改正は本当に在宅者の自立支援に繋がるか、大いに疑問がある。

こういうおかしさが大手を振ってまかり通ろうとしているのが今回の改正だ。

いま出されている数字の本質を見誤ってはいけない。

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