介護保険制度改正については介護給付費分科会で論議されているという。

しかし、この分科会の論議とは別なところで様々な(国の)方針なり、制度改正の方向性がリークされている。新聞報道が最新情報である場合も数多い。

それが正しい情報かどうかは別にして、ある意図を持って、誰かが報道機関にリークして、観測気球をあげて反応を見る、という状況が確かにあるように感じる。

つまり給付費分科会は制度改正の議論の場ではなく、議論していることを国民に示すパフォーマンスの場にしかなっていないのではないだろうか。そして、その議論をみても、委員から挙げられた意見に基づくものより、国の示した考え方についての議論が圧倒的に多いのが実情である。

そんななか、昨日示された同分科会の資料によれば、特養は「生活重視型の施設」と位置づけ「居住環境としてはユニット型が基本」としている。

これを取り違えて理解していけない。

つまり国は何も現行の特養すべてをユニット型に移行させようとしているのでない。それは不可能であることは百も承知である。

だが特養のスタンダードをユニット型と規定するこによって、現行報酬が従来型施設を基準にして、ユニット型施設に厚くする、という図式になっているが、これを転換し、ユニット型をスタンダードに報酬設定し、従来型の、特に多床室についてはスタンダードより劣るものとして大幅な報酬減で対応しようとしている、という意味があるのだ。

これが資料の冒頭に示されている「ユニット型個室と多床室の報酬設定のバランスについて、どう考えるか」の真意である。

こんなことは老施協の幹部も承知しているんだろう。しかし末端の現場職員に、その意味を知らせる動きは全く見られない。これで良いのだろうか?

また同資料から読み取れるのは報酬設定の基本方向について「利用者の重度化傾向を踏まえた中重度者への重点化」という表現で、ますます軽介護者(1.2を想定か)に対する報酬の大幅削減を示唆している。

国としては介護施設の入所要件を3以上にしたいところであるが、制度利用の権利という観点から、介護度による制限が難しいと見て、現場の報酬で、現場自身が軽介護者を排除する方向に向かわせようとしているのだろう。

かくして、報酬減で人員削減を余儀なくされる施設現場には熟練職員が少なくなり、人手も減る。そのなかで重度介護者が増え、現場の労働条件はさらに悪化し、それはいずれこの国全体の介護サービスの質の低下に繋がっていく、という方向に向かっていないか懸念が広がるところである。