介護支援専門員の現任研修において、保険者担当者の「今後のケアマネジメントの課題」に関する講義を聴く。感想=本当にがっかりしてしまう。

将来の支援専門員の行く末にがっかりするのではなく、保険者担当者の見識にがっかりする。

なぜかというと、国が決めた方針なり、ルールなりが、ケアマネジメントの質の向上に直結するものとして、批判的精神がなく、国の考えのコピーをそのまま現場に押しつけようとするから現場の意識から乖離するし、現実の具体的解決方法を示すことにならないことに気付いていないのだ。

(その1)
「予防給付の創設は、適切なマネジメントが行われなかった結果による部分が大きい、当保険者で行った適正化事業の実施年では要介護度の改善率が著しかった」

おやおや、では適正化事業の中身は何ぞや、というと、ケアプランの内容から不適切として抽出したのは上位から挙げると1. 過剰サービス 2.過小サービス 3. 囲い込み 4.福祉用具購入 5.信頼関係 6.通院等乗降介助である

おかしいと思わないか?適正化事業でこれらの問題を抽出したとて、直接、要介護度の改善に繋がる理由がないではないか。過剰サービスを減らしたら、要介護度は改善するの?ここの考察が皆無では何のエビデンスにもならないぞ!!

(その2)
「今後は担当人数が減るが、ケアマネさんも忙しいだろうが、サービス担当者会議は適切なケアプランに重要であり是非、実施に努めてほしい。」

サービス担当者会議の実施率の低さを、ケアマネ自身の業務の多忙さや、怠慢に結び付けてしか考えない行政職員が多いから、この問題はいつまでもなくならないのだ。

そもそも所属事業所の異なる多職種の人間が平日の通常業務の時間内ですべて参集出来る機会というものが、そう簡単に取れると思っているのか?担当人数が仮に30人であっても、全てのケースで例えば半年毎に、担当者が一同に会して会議を行うというのは不可能だ。「困難ケース」に絞って一同に会す、という方法しか取れないのが現実であろう。

しかし幸いなことに、担当ケース全てが困難ケースということはあり得ないので、そうでないケースは、書面やその他の連絡方法で相互のコミュニケーションを取る方法で代替することは現実的にはやむを得ないのだし、必要な情報のやり取りの方法を電子的技術も取り入れて行えば適切な情報交換と課題の共有は可能であり、適切な計画は作成できるのだ、逆説的にいえば担当者会議を開いてもケアマネジメント技術に問題があれば適切なサービスはできない。

そろそろケアマネジメントの質が担当者会議の有無で左右されるという発想自体を転換させなければいつまでたっても問題の本質は見えない。

もちろん、首をかしげる内容の講義ばかりではないし、必要な知識や技術を得るきっかけになる内容のものも多い。ただ現任研修は今後はケアマネ資格の更新制と結びつく。質の確保により重要な要素になることを考えると、講義内容は一層の充実が急務である。

とりあえず時間を埋めるために近隣保険者の担当者からの情報提供の時間を入れる、という発想は止めたほうが良い。