高齢者が要介護状態となるリスクは、加齢と疾病が最大要因で、原因疾患は1番目が脳血管障害、2番目が高齢による衰弱、3番目が骨折である。

しかしそれとは別の視点で生活の中の危険因子を見つめてみると「引きこもり」が重要な要素になってくる。

引きこもりといっても、家から1歩も出ない状態に限らず、外出が億劫になり週1回程度しか外出しない、という状態も含んでよいと思う。

外出しなければ、人と逢わないから、身だしなみに気を使わなくなる。口臭や体臭も気にせず、歯磨きをしなくなり、入浴回数が減る。

外部の生活と自分の生活をマッチングする必要はないから、朝寝や夜更かしが生活障害にならなくなり、昼夜逆転や夜間不眠が繰り返される。人によっては不眠をアルコールで解消しようとする。

外出しないで家でごろごろしているからお腹が減らない。お腹が減らないから食べるものも不規則になるし、好きなものしか食べなくなる。

このように高齢者は、引きこもりによって、健康を害したり、見当識を悪化させたりしていくことが多いのだ。特に男性の単身者にとっては良くあるパターンである。

また機能面でも、家の中だけの生活だから、できることをしなくなる。やりたいことしかしないから身体機能は生活の中で使われない。

できることと、やることは、本来違うのだ。

生活の中でやれることを、することに結びつけるのが本来の廃用予防で、筋力アップして、できることが増えても、やらなければ廃用は改善しない。

だから「引きこもり」に対する具体策がなく、むしろ通って受けるサービスに利用者にとって「望まないもの」をメニューに義務付け、廃用を、生活障害として捉えず、筋力低下として捉える新介護予防は不成功に終わるであろう。