通所介護と通所リハビリの入浴加算が大きく変わることになる。

16日の介護給付費分科会の通所介護費の資料の(論点4)と、通所リハビリ資料の(論点5)にその内容は示されている。
新入浴加算のイメージ
(※資料に示されている通所介護と通所リハビリの新しい入浴加算のイメージ図)

通所介護では、次の考え方が示されている。

・入浴介助加算について、現行の加算に加え、利用者が利用者宅において、自身又は家族等の介助によって入浴を行うことができるよう、利用者の身体状況や訪問により把握した利用者宅の浴室の環境をふまえた個別入浴計画を作成し、それに基づき個別の入浴介助を行うことを評価する加算を新たに設けることとしてはどうか。
・ 一方、上記の取組を促す観点から、現行の入浴介助加算については、単位数を見直してはどうか


通所リハビリについては上記2点に加えて次の方向性が加えられている。

・通所リハビリテーションにおける新たな加算については、個別入浴計画の作成に際し、血圧測定や肢位観察等の入浴開始前及び実施中における留意事項について、医師の具体的な指示に基づく緊密な対応が可能であるため、通所介護との評価に差を設けてはどうか。

つまりリハビリの専門職が自宅を訪問して、浴室環境を確認したうえで、利用者が自宅で入浴自立できるように計画作成する入浴加算を新設し、ただ単に入浴させるだけの入浴加算の上位区分にそれを位置付けるというものだ。

その際に、できるだけ新加算(上位区分)を算定することを促すように、現行の入浴加算については単位を今より下げるというものである。ただし通所リハについては、医師の具体的な指示に基づく緊密な対応評価という視点から、下位区分の入浴加算単位も、通所介護よりは高くするという意味だろう。

新区分の入浴加算は、利用者が利用者宅において、自身又は家族等の介助によって入浴を行うことができるようするためのもので、次の算定要件をクリアしなければならない。
・医師・理学療法士・作業療法士が利用者宅を訪問し、浴室の環境を確認する。
・利用者宅の浴室が、利用者自身又は家族の介助により入浴を行うことが難しい環境にある場合は、環境整備を行う。
・通所介護事業所において、多職種連携のもと、利用者の心身の状況や居宅訪問により把握した利用者宅の浴室の環境をふまえた個別入浴に関する計画を作成する
・計画に基づき、個別に入浴介助を行う


しかしこの要件は通所リハはともかく、通所介護にとっては高いハードルと言える。

なぜなら訪問職種が、「医師・理学療法士・作業療法士」となっているからだ。これらの職種は、通所リハビリなら必ず配置されているが、通所介護の場合は、機能訓練指導員も看護職員が務めている事業所が多いので、加算算定の要件となっている職種が配置されていない事業所が圧倒的に多い。

そのため生活機能向上連携加算と同様に、通所介護事業所は外部の訪問リハビリテーション事業所・通所リハビリテーション事業所等との連携により訪問職種を確保することとして差し支えないとされているため、今から新入浴加算の算定に備えて、連携先を探さねばならない通所介護事業所も多いだろう。

しかし連携する場合は、通所リハ事業所などが無償で連携に応ずるわけがなく、費用(契約費用)が発生することになり、それは通所介護の持ち出しになる。となると現在より高い単位を算定できたとしても、その費用支出を鑑みれば、収益は現在より低くなる可能性が高い。

場合にっては、上位区分の新入浴加算を算定する方が、下位区分で単位が下がる従前からの入浴加算を算定したほうが収益は高くなるという逆転現象が生ずる可能性がある。

この点、通所リハビリは自前の職員で上位区分を算定できることに加え、新入浴加算を算定しようとする外部の通所介護事業所と連携して、新たな収入が確保できる可能性も出てくるので、従前より収益を挙げることが容易になることだろう。そういう意味では、通所リハ事業所にとっては2重においしい加算であると言えるかもしれない。

自宅訪問のアセスメントの手間の問題も、両者には差異が生ずる。

通所介護では個別機能訓練加算の要件に自宅訪問によるアセスメントが含まれており、機能訓練指導員等が訪問することになっている。

通所リハでは、自宅訪問によるアセスメントはリハビリテーションマネジメント加算の要件になっているが、それは理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のいずれかが行うとされている。

その訪問と同時に入浴のアセスメントも行うことも認められると思うが、通所介護の場合、個別機能訓練加算のための訪問アセスメントを現在行っている職員と、新入浴加算の算定要件の訪問職種が異なるケースがほとんどのため、両者の訪問を別に行う手間が増えることになりそうだ。

この点、通所リハはリハマネ加算の訪問を、そのまま入浴アセスメント訪問とすることが可能な場合が多いだろう。

このように新しい入浴加算は、通所介護と通所リハで算定要件は同じとされているものの、両者への影響は全く異なってくるものになると思え、通所介護の場合は、手間と費用をはかりにかけながら、新単価を見据えつつ、入浴加算の区分算定をどちらにすべきかを選ぶ必要があると思う。

通所リハは、迷うことなく上位区分の新入浴加算を算定すべきであり、それ以外の選択肢はないと言えるであろう。

しかし通所介護についていえば、この新入浴加算の考え方は根本的に間違っていると最後に指摘しておきたい。

通所介護における入浴は、何らかの事情で自宅で入浴が困難な人が、通所介護事業所で入浴できることそのものに、意味があるのだ。

入浴困難な理由は、身体状況や浴室環境を改善すればどうにかなるという問題ではなく、加齢に伴うよんどころない巧緻障害等で、他者の支援に依らないと清潔度が低くなったり、冬期間の家庭の浴室は寒くて入りたくなかったり、様々な事情で、通所介護事業所内での入浴を希望している人が多いのである。

通所介護の大きな浴室で、ゆっくり温まって心身共にリラックス・リフレッシュしたいという人たちにとって、機能訓練とリハビリを強要させられる入浴支援なんて迷惑で、うっとおしいものでしかない。

新加算は、余計なお世話加算であると言いたいところであるし、その目的は従前からの入浴支援の単価を下げるための方便ではないかと疑いたくなるのである。
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