走りながら考えるとしてスタートした介護保険制度・・・その制度創設から今年は25年目の年に当たる。
四半世紀という月日が、まだわずかと考えるのか、もうそんなにと考えるのかは人それぞれだろう。
しかし戦後初めて我が国の社会保障制度が抜本的に構造改革され、高齢者福祉制度も新たなかじ取りがされたという大改革という意味においては、25年という月日はさして長いものではなく発展途上だ。
その中で、どのような歴史を持つ事業主体であったとしても、介護保険制度に則ったサービス提供は、長くとも25年しか経験を持ってないといえる。まだまだ若造だ。
このように介護保険制度はまだフレッシュで、様々な改革の余地があるといってよい。
特に昨今は、毎年増え続けていた介護職員数が初めて前年比を下回り、介護人材不足は益々深刻化している。
しかも25年前に他産業・他職種から転職して介護職となった、当時働き盛りの40歳だった人が65歳=介護保険の1号被保険者に達することになるため、介護人材不足の加速度は一気に高まるといってよい。
そのような情勢下で、介護生産性向上の必要性が増すわけであり、そのために介護サービスの場で使うことができるICTやAI搭載機器なども日々進化している。それに対応しなければならないのが現在求められる介護事業経営戦略である。
ところがそうした情勢変化に対応しきれていない介護事業者が少なくない。その理由が組織の風土という名の得体のしれない縛りであったりする。
求められる変革の中には、結果がどうなるか不透明というものばかりではなく、確実にこうなる・間違いなく良くなるといものもあるのに、それをわずか四半世紀の歴史でしかない風土が邪魔するのである。
ICTを使いこなせば、連絡業務は時間と手間を大幅に減らすことができるにもかかわらず、引き継ぎは必ず対面で口頭で行わねばならないとか、その場で行って完結する内容の連絡も必ず文書で残さねばならないとか、逆に申し送り事項は口頭で行って書面引継ぎは許されないとか、わけのわからないルールにがんじがらめになって身動きが取れない事業者が存在している。

時代の流れに流されない揺るぎなき伝統文化も、時には大事になるけれども、仕事の仕方にそのような伝統も文化も必要ない。
そもそも状況の変化や制度改革に対応して仕事のやり方を変えないというのは、伝統ではなく、それはしがらみそのものである。
そこは転換を図っていかなければならない。
ある広域型施設では、職員不足に対応するために、会議をすべて担当するフロアから参加できるようにした。介護職員は自分が担当するフロアのサービスステーションから、ナースはナースステーションから、相談援助職は相談室からというふうに、会議室に集まらずに職員会議等を行うようにした。
その結果、会議のために一同が介するための移動時間や待ち時間が無くなり、時間と業務負担の削減につながるだけではなく、会議室が不必要になった。
そこで会議室をラウンジに改装し、ドリンクサーバーを設置し、従業員は無料でフリードリンク出来るスペースにした。それによって職場環境が改善するにとどまらず、業務時間を終えた後にもラウンジに集う職員が増え、そこで業務に対する様々な意見が交わされて、ケアの品質向上へのモチベーションがアップする結果ももたらした。
こんなふうに組織風土も伝統も、良い方向に変えていくことが大事なのだ。
だから今日も僕は、あるコンサル先で組織風土を打ち壊し、伝統という名のしがらみを消し去ることために戦っている人を後押ししている・・・勝利はもう目の前に近づいている。
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